2017年9月14日木曜日

WHPSC 予選通過まで


Photo by Jo Koga
日本だと凄技でおなじみの?WHPSC(ワールド ヒューマン パワード スピード チャレンジ)。
僕としては、エコランのときから車体形状の参考にしたりしていて馴染み深かった競技です。また、ポピュラー・サイエンス誌のエアロベロのブルーノーズ(尾翼があるやつ)が世界記録を出した記事を見たりして、いつか出たい、と思っていたのです(ちょっと図面書いたりしてました)。
そして、凄技で設計を依頼された池上さんは電気自動車エコラン時代からの大先輩で、僕も、プロジェクト初期から一応関わっていた…ようなそうでもないような(笑)感じ。
1年目のチャレンジは無事終了したところで凄技としてのプロジェクトは、一旦終了となりましたが、継続することが大事との東レ カーボンマジック様の意向によりレースへの参加が続けられることになったのです。リーダーは池上さん。ライダーは小森さんが今年は自転車ロードレースで忙しいとのことで、僕にオファーがあり、二つ返事で受けたのです。(まあ身の程知らずという感じもしますが)。

国内ではスピードを出せるところがないので、主にスタート練習だけをして本番に挑みました。

9/9(土)
移動。



車体は「デカいけどそんなに重くないスポーツ用品的な何か」で手荷物で運びます。サイズ超過の2万円プラスで運べます。これはオランダのシグナスから伝授された技らしい。
ケースはサーフボード屋さんにオーダしたもの。

夕方羽田から出発し、同日昼過ぎにサンフランシスコに到着。
入国審査で時間がかかったりして、レンタカーを受け取るのがだいぶ遅れた上にレンタカーの車種が変わり積み込みができるか心配だったけどなんとか。





広大な景色に圧倒されながら移動し、リノで一泊。
部屋が2つ足りなかったけどなんとかした。


9/10(日)
出発前に、宿の近くにあるホームセンターでパテや補修部材を買い出しに行ってからいざバトルマウンテンへ。

到着し、車でコースへ。ロードバイクで試走してみた。遠いよつまんないよ。



帰ってきてから、試走用コースで試走。スタートとキャッチの練習。かなり上手くいった。

19時から初めてのミーティング。チーム紹介から、予選の順番のくじ引きを行った。24チーム中20番(なんとなく運の悪さはここから既に)。

夕飯は宿のそばのレストランに歩いて。
注文を取り違えられてステーキがミディアムだった。


夜は疲れもあってしっかり寝られた。

9/11(月)
朝、Qualifying Run




スタート直後に右脚のクリートがペダルから外れ、なんとかしようとするものの左も外れて万事休す。転ぶ。
スタートでミスするとは余り思ってなかったので割りとショック。
気を取り直して再スタート。二回目で上手く行った。が、舞い上がっていたのか突っ込みすぎる。
残り1.5マイルの辺りで風に煽られて一瞬足を止め、ロードレースの癖でクランクを戻してしまう(踏み込み始めやすいところに)。
その結果チェーンが外れる。既に80km/hほどの速度が出ている、減速して停車するか、惰性で行けるところまで行くか悩んだものの、ひとまず惰性を選択。
が、500mくらい走ったところで横風で路肩に押し出されてクラッシュ。
ハッチが開き、身体がマシンから半分出てしまい、ブッシュで身体が傷だらけに。鼻血か鼻あたりを切ったための出血があるけど身体は大丈夫。
車体もとりあえず大丈夫そう。
DNFのため予選通過はならず(予選通過には72km/h以上の速度を計測する必要がある)。また明日。

昼のミーティングで明日のQualifying Runの時間が決まる。走行枠は”速いモン順”。
上位を狙うチームは順調に通過している。イタリアが106km/hで通過して下馬評の通り調子が良さげ。

午後、車体の改善に取り組む。
ペダルが外れる件は、10日の夜にLOOKからPowerTap P1ペダルに交換したせいと思われるので、クリートのリリーステンションを上げた。




チェーンが外れた件は、池上さんがチェーンガイドを改良したのと、私は最終段のシングルフリーの空転が重いためと判断し、
フリーを分解し、シールの取り外し、グリスを少し抜き空転を軽くした。
去年使用したフリーホイールが輸送中に割れたため新品に交換したのですが、明らかに”馴染み”が出ていなく回転が重かったための判断での作業。この競技で接触シールベアリングはそもそも要りません。

夕飯はメキシコ料理。

夜は寝れなかった。

9/12(火)
朝、Qualifying Run 2回め。




スタート直後にやはりクリートが外れるが、プッシャーにスタートの中止を適切に伝えられたので転ばす停車でき、再発進できた。ここで、引き足を過大に使うと外れるのがわかったため、スタート直後は踏み足のみに集中することにする(通常の走行中は元々そこまで引き足を使わない)
再スタートで発進成功。
速度を乗せていくが、だんだん後輪からの摩擦音が多くなってくる。
路面の段差を通過した辺りから、摩擦音が断続的ではなく連続音になる。そしてゴムの焼ける匂いがひどい。これはパンクの危険があると判断したが、停車して予選通過を出来ないのであれば、速度をキープしてパンクをしないことを期待することを選択。が、しばらくするとやはりバースト気味なパンクをした。
少しだけリム走りをしたけども、ホイールを破損させてはいけないと思い、転倒を選択(頑張っても無理だったけど)。
路上を横回転しながら滑走し、再び路肩へ転落。今回はハッチは開かず、怪我もなし。




回収され宿へ戻り車体を調整。リヤのライドハイトを調整し、タイヤを多めに出す方向にしてボディとタイヤが擦れないように調整。また、最小限にしていたホイール開口部を広めにする加工をした。空力性能が低下するが仕方がないと判断。

夕飯はちょっと高めなステーキハウス。炭火いいね。

0時に起きてしまったが、買っておいた睡眠導入剤を飲み、頑張って目をつぶって途切れ途切れだけど寝た。
計測を終えてキャッチされる夢を見た。

9/13(水)
朝、Qualifying Run 3回め。
ライドハイトの確認で僕が乗り込んだところで、想定以上に車体が沈み込んでいるのを確認。
車体を押すと、ミシミシという、いかにも構造部材が剥離している音がしたので確認すると、リヤスイングアームセクションのアッパーマウントのモノコック接着部で剥離していることがわかった。ここは構造接着剤のみで接着してあり、オーバーレイをしていない部分。理想的に見れば圧縮なので大丈夫と思われるが、ロッドエンドがアッパーマウント上面に取り付くため、曲げの応力がかかり、剥離しやすい部分であった。
Qualifying Runは中止し宿に帰り、対策を検討。ひとまず構造接着剤をとグラスファイバーの補修キットをカーショップで購入し応急処置の準備を。構造接着剤での二次接着とフィレットは先に作っておき、午前の走行から上位チームが帰ってくるのを待ち、カーボンファイバーでオーバーレイする材料を持っているチームを探し、それがあればそれを頂いて補修する段取りとした。
走行から帰ってきたトロント大学に聞いたところ持っているとのことで、分けていただくことにした。

ミーティングが終わり、作業を開始したが、トロント大学のカルビン君(もはや”様”と言ってもいいな(笑))がこちらのやりたいことを伝えたら、「俺に任せろ」と言わんばかりに作業を進めていく。作業は丁寧だし完璧。
おっさんども(僕と池上さん)は感心して眺めるのみ(笑)


Thank you,Calvin!!
レースをやっているエンジニアであれば、「直したい欲」ってあるよね。若いからもはや「ギラギラした直したい欲」
若いやつも捨てたもんじゃないな、って、おっさんか。

ある程度温風ヒーターで硬化させたところで、宿に持ち帰り、直射日光で温めて硬化をさせる。
硬化したところで確認したところ明らかに接着部の剛性が上がり、これなら問題なさそう。





もはやQualifying Runで失敗するわけにはいかないので、車体のチェックは念入りに。

そして三本ローラーとロードバイクでトレーニングを。L4を5分のワークアウトだが、高地(1400m)か扇風機がないかのどちらかの要因で非常にキツかった。
夕方の決勝の走行を見学に行くものの、雨で中止。




夕飯は地雷と評判の中華料理屋がやはり地雷か確かめに行ったら、やはり地雷だった。甘い焼きそばを堪能。
夜はローラーの疲労もありよく寝られた。

9/14(木)
朝、Qualifying Run 4回め。(実質3回)
負けられない戦い(ry
のQualifying Run。これ通らないとマジでヤバイ。





意外と落ち着いてた。
260Wほどで踏み続ければ予選は通るのがシミュレーションの結果で分かっていたのは良かった。AHEAD Sports Engineeringさん様々ですよ!(ってかそれまでが焦りすぎ)

予選ペースのシミュレーション結果を見てるところ
スタートは一発で決まった。が、PC8が一切を表示しなくなる!まあいいや!!
できるだけ頑張ってみるつもりで、残り1.5マイルからスパート、初めて計測区間を走れてた!思わず「よし!」出ちゃうよね。
が、その後足を止めつつギヤを変えたらチェーン落ちしてしまい、速度を落としすぎるとキャッチ区間にたどり着かないかもという恐怖で
速度の落とし方が甘く、キャッチ区間で速すぎるので、逃げるキャッチャーさん(笑)
こりゃいかんと思い、フルブレーキしたらリヤがロックして転ぶ。ゴメンナサイ。

予選通過は問題ないとおもう、問題は今日の夕方走れるか、ってこと。
というわけで昼のミーティング。速度の発表があり、僕らの速度(108km/h)がQualifying Runの中の記録で上位となり、ポテンシャルが有望と主催者が判断したため、決勝の走行枠を早めに確保できるようになった。これは予想外だけど嬉しい。
というわけでこの日の夕方に走行ができることになった。(実績がないので早くて明日の朝の枠からなるかと思っていたので嬉しい誤算)

車体のチェックを再度し、決勝の走行へ向けて、ホディの傷をパテ埋め開始。



そして17時頃に、夕方の走行のためにコースに行きアップまでしたが、雷雨気味な悪天候だったため、走行は残念ながらキャンセル。明日の朝の枠が5マイルの初走行となった。

夕飯はシビックセンターの近くのシャレオツステーキハウスへ。
スープも肉もGood!(16ポンド キツかった…)



まあまあ寝れた。

決勝走行編へ続く!って残りは2日!

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